本サイトの「オンザロックスは氷の大量生産なしには生まれなかった」で、氷とカクテル文化の深い関わりをたどりました。今回は、氷そのものの品質、とりわけバーで見かける、あの澄み切った「クリアアイス」の秘密に迫ります。
なぜ家庭の氷は、白く濁ってしまうのか
家庭の冷凍庫で作った氷が白く濁る原因は、水に溶け込んでいる空気や、カルキなどの不純物にあります。家庭用の冷凍庫では、製氷皿が周囲すべての方向から均等に冷やされるため、凍っていく過程で空気や不純物が水の中心部へと押し出され、最後にそこで固まってしまいます。これが、氷の真ん中に見られる、あの白い塊の正体です。透明な氷は硬くて溶けにくいという性質があるとされ、見た目の美しさだけでなく、水っぽくなりにくいという実用面のメリットも持っています。
「お湯を沸かせば透明になる」は、正確ではない
家庭向けの解説では、「水を沸騰させて空気を抜けば透明な氷になる」としばしば説明されます。しかし、氷を専門に扱う業者による解説によると、この理解は必ずしも正確ではないとされています。
密閉された特殊な環境でない限り、空気は時間の経過とともに、再び水の中へと溶け込んでいきます。つまり、煮沸したからといって、それだけで透明さが保証されるわけではないのです。透明さを決定づける、より本質的な要因は、あくまで「ゆっくりと、一定の方向性を持たせて凍らせること」にあるとされています。
クリアアイスを生む、方向凍結という技術
業務用のクリアアイスの多くは、「方向凍結」と呼ばれる技術によって作られています。氷を一つの方向からゆっくりと時間をかけて凍らせることで、水の中に対流が生まれます。この対流が、空気や不純物を、まだ凍っていない部分へと絶えず押し流し続けてくれるのです。
最終的に、不純物が集中した部分だけを切り落とすことで、あの均質で透明な氷が完成します。時間と手間を惜しまない、丁寧な工程の積み重ねが、あの透明さを支えているのです。
家庭でも近づける、簡単な工夫
家庭でクリアアイスに近づけたい場合は、保冷性の高い容器を使い、タオルなどで包んでゆっくりと時間をかけて凍らせるのが効果的とされています。そして、完全に凍りきる前に、まだ凍っていない中心部分の水を捨てるという一手間を加えることで、透明度の高い氷に近づけることができます。ちなみに、プロが使う氷はマイナス9度前後というゆるやかな温度でじっくりと凍らせているのに対し、家庭用の冷凍庫はマイナス18〜20度程度とかなり低いため、そのままではどうしても凍るスピードが速くなりすぎてしまいます。タオルで包むという一工夫は、この温度差を埋め、ゆっくり凍らせる環境に近づけるための、身近な知恵だといえるでしょう。
まとめ
クリアアイスの透明さは、単にお湯を沸かすだけでは実現できません。ゆっくりと方向性を持たせて凍らせるという、丁寧な工程の積み重ねによって、初めて生まれるものです。次にあの澄み切った氷を見かけたときは、その奥にある繊細な技術にも、目を向けてみてください。
飲酒は20歳になってから。本記事の内容は執筆時点の情報をもとに構成しています。